この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「と、取り敢えず、じっとしててください」

「してるが……?」


 ジリジリとローデリヒ様に近づく。
 接触……接触……、キスとか?いや、ハードルが高すぎる。これでもヴァーレリーちゃん並にウブなんだ。子供二人目妊娠してるのにウブってなに?って感じだけど。

 難易度低そうなハグでいこう。そうしよう。

 ローデリヒ様に近付くと、白い首に喉仏がはっきり浮かんでいる所や、寝間着の襟元から鎖骨が見える所とか、なんかそういう所までかっこいい。顔良い上に身体まで良いとか、この王太子様に天は何物与えたの?

 真正面から抱きつくつもりだったけど、気付いた。
 あれ?胡座かいてたら意外とローデリヒ様が遠い?
 仕方ないのでゆっくりとローデリヒ様の膝に乗り上げて、背中に腕を回した。

 細身の体には、意外と筋肉がついているのか固い。
 胸元に頬を寄せると、やや高い体温と少しだけ早い鼓動が伝わってくる。

 ……ローデリヒ様、なんかいい匂いするんだけど。
 ぺったりと彼の胸に頬をくっ付けていたら、上から戸惑った声が落ちてくる。


「その……このままでどうするんだ?」
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