この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 私はそのままの体勢で見上げた。ローデリヒ様は下を向いていたらしく、目がバッチリと合う。ローデリヒ様の体に変な力が入ったのが伝わってくる。


「これで証明出来ましたか?」

「………………証明?」


 さっき証明するって言ったばっかりなのに、もう忘れちゃったの?
 ちょっとムッとしながら説明し直した。


「ローデリヒ様に触る事に対しては嫌じゃないって事を証明してるんです」

「……あ!ああ……、そうだったな……」


 完全に頭の中から抜け落ちていたようなリアクション。なんか珍しい。


「それで、分かってくれました?」

「分かった……。充分分かった……」


 ローデリヒ様の答えに満足して、私は彼の膝から降りる。何故か全身の力を抜いたローデリヒ様が、両手で顔を覆って俯いた。月光のような金髪から覗く耳が真っ赤に染まっている。


「……やっぱり、欲求不満なのかもしれない…………」


 えっ。
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