この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 ジギスムントは目が点になった。
 ローデリヒにふざけてる様子などない。本気だった。


「おそらく原因は寝不足による肉体的ストレスだろう。心臓発作自体は軽いものだと思われるが、今は倒れることは出来ないからな。冠動脈の血流が良くなる薬でも……」

「お、お待ちいただけますかな?!精密検査をしましょう?!」


 ストップをかけたジギスムントは内心冷や汗をかいていた。

 何を言っているのだ?この王太子(馬鹿)は。


「精密検査?そんなことしてる時間がないのはジギスムントも分かっているはずだろう?特に今日はパーティーなのだぞ?」


 投げやりな返答をした王太子(社畜)に、ジギスムントはガッチリと腕を掴んだ。


「一国の王太子が自分の健康に気を遣えないでどうするんですか?!」

「……私的には大丈夫だと思うのだが、イーヴォが本当の心臓発作を起こしていたら怖いと連れてこられた」


 ジギスムントはチラリと部屋の隅に佇む従者を見た。ローデリヒと同い年の彼は、どうしようもない奴を見る目で主君を見ている。


「とりあえず、昨夜アリサに抱き着かれて、そのまま至近距離で見上げられた時に心臓がおかしな感じになったんだ。ちなみに今朝も今も何も起こっていない。大したことはないが、念の為に薬が欲しくてな。確か医務室にあっただろう?冠動脈の流れを良くする薬草が」
< 444 / 654 >

この作品をシェア

pagetop