この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 頭を抱えたイーヴォは「頭良い馬鹿ってホント……」と呟いていた。


「まあ、寝不足で肉体的負荷が掛かってしまっていたのだろう。反省して今日から充分な睡眠を取るようにする」

「反省する所は他にもありますけど、……本当にそうしてください」

「今日はこの薬を飲むから禁酒だ。ジギスムントにも止められているからな。体を労ることにする」


 乾燥した葉っぱを粉々にしたローデリヒは、飲みやすくする為に蜂蜜を少し加える。そして、一つに薬をまとめた。
 出来上がった毒々しい緑色の丸薬に、イーヴォの顔は引き攣る。


「うわあ。不味そう……」

「薬は大体不味いだろう……」


 ローデリヒは水と共に丸薬を口の中にいれた。ものすごく苦い味が口の中に広がる。水を飲んでも残る苦い感覚に、眉をやや動かした。

 仕方がないのだ。
 治癒魔法が効くのは外傷のみ。病気は治らない。だから、ローデリヒは何かあった時の為に調剤の勉強をした。治癒魔法と両方使えれば、戦場で便利だと思ったのである。調剤といっても、調剤の数段階の資格の中で一番簡単なものではあるが。

 口の苦さはそのままに、執務机に積んである仕事へと手を伸ばす。
 今夜はパーティーなのだ。どこまで減らせるのだろうか。
 ローデリヒは既に気が滅入りそうだった。
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