この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 エーレンフリートが半眼になった時、急にパーティーホール前方の階段が騒がしくなる。パーティーがこれからはじまると、その場の空気に緊張感が漂った。
 近衛騎士が声を張り上げ、国王が入場してくる事を伝える。

 ハイデマリーをエスコートしながら降りてくる国王。エーレンフリートはこっそりと、隣のローデリヒに耳打ちした。


「そ〜いや、前は珍しく陛下の前に出てきてたよなぁ?」

「ああ……。アリサが居たからな。エスコートする人もいないのに、ああやって登場するのもな」

「なるほど」


 納得したように頷いたエーレンフリート。国王が短く歓迎の言葉を告げ、参加者は一斉に動き出した。
 楽隊も演奏を始め、パーティーホールの中央では既に婚約の決まっている者や、既婚者達が踊り始める。その様子を男三人でぼんやりと眺めていた。


「…………年頃の男三人でずっと固まってるのも勿体ねぇな。オレ、ちょっと知り合いの令嬢誘ってくる」

「ああ」

「ローデリヒは?ど〜すんの?」

「今日は踊るつもりはない。顔は出した。適当な所で帰ろうと思っている」


 なにせ、とても弱いとはいえ、冠血管系の薬を飲んでいるので。

 エーレンフリートは「りょ〜かい。あんま無理すんな〜」とローデリヒの肩を軽く叩き、女漁りに向かう。
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