この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 エーレンフリートは複雑そうな顔で首を傾げる。ハイデマリーは余裕そうに返した。


「問題ないわ。貴方とゲルストナーはともかく、陛下はわたくしに甘いのよ」

「ズルくないですか?!」

「それ、オレら不味いじゃん?!」


 目を剥いたゲルストナーとエーレンフリートを放置して、ハイデマリーはすました顔でパーティーへ戻ると去っていく。ゲルストナーも夜なのにまだ残っている仕事があるというので、フラフラと戻っていく。

 残ったエーレンフリートと女性も廊下を進んで行く。暗がりに紛れ込んで良い雰囲気のまま部屋に入ろうとした所で、荒い息と共に早い足音が向かってきた。二人が何気なしにそちらを向くと、イーヴォが暗闇から姿を見せる。


「エーレンフリート団長!」

「あれえ?イーヴォ、ど〜した?」

「ローデリヒ殿下をお見かけしませんでした?」

「してないよ?ね〜?」


 エーレンフリートは首を横に振る。隣の夫人も同じようなリアクションだった。イーヴォは礼を言って、再びローデリヒを探しに行こうとする。
 エーレンフリートは少し考えて、イーヴォの背に声を掛けた。


「オレも行くよ〜」

「え」


 イーヴォはびっくりしたように目を見開いて振り返る。


「え、なに?ローデリヒに会っちゃダメ?」

「い、いえ、そういった訳では……」

「なにさ〜。もしかしてローデリヒが奥さんとイチャイチャしてるとか?」

「それはないと思います」

「ワオ、即答」


 夫人に軽く耳元で何かを囁き、エーレンフリートは女性と別れてイーヴォに並ぶ。イーヴォは白い目でエーレンフリートを見た。
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