この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
国王は瞳を閉じて息を吐いた。
相変わらず感情の籠らない声のまま、「だが」と続ける。
「ローデリヒもいい大人だ。自分で選択させた方が良いだろう。……お前が心配していたとしても」
「……ええ、そうね」
しばしの間黙り込んだハイデマリーだった。しかし、納得したように同意する。
「私達は誰かを使う選択を取る。だが、ローデリヒは私達とは違うのだ。私は、べティーナの元でローデリヒを育てた事を後悔したくはない」
ハイデマリーは過去を懐かしむように目を細めた。べティーナは一介の侍女だった。本来ならば、ハイデマリーと同じ地位になる事もなく、その人生が国王と交わることすらなかった。当時、国民は身分差だと持て囃したものである。
「それでも自己犠牲だけは愚かだわ……」
ハイデマリーの呟きに、国王は口元をほんの少しだけ緩める。
「それ、お前が言うのか?」
口から出てきたのは決して穏やかではない、皮肉だった。
相変わらず感情の籠らない声のまま、「だが」と続ける。
「ローデリヒもいい大人だ。自分で選択させた方が良いだろう。……お前が心配していたとしても」
「……ええ、そうね」
しばしの間黙り込んだハイデマリーだった。しかし、納得したように同意する。
「私達は誰かを使う選択を取る。だが、ローデリヒは私達とは違うのだ。私は、べティーナの元でローデリヒを育てた事を後悔したくはない」
ハイデマリーは過去を懐かしむように目を細めた。べティーナは一介の侍女だった。本来ならば、ハイデマリーと同じ地位になる事もなく、その人生が国王と交わることすらなかった。当時、国民は身分差だと持て囃したものである。
「それでも自己犠牲だけは愚かだわ……」
ハイデマリーの呟きに、国王は口元をほんの少しだけ緩める。
「それ、お前が言うのか?」
口から出てきたのは決して穏やかではない、皮肉だった。