この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 眩しいものでも見るように国王が庭に目を向ける。そして、ローデリヒに同意を求めるように「なあ?」と話しかけた。


「はい……」

「はは。興味無さそうだな」


 花よりも動き回りたい年頃のローデリヒの反応に、国王は軽く笑った。ローデリヒの脇に手を入れて軽々と抱き上げる。


「ちょ、父上っ?!」

「また大きくなったんじゃないか?」

「恥ずかしいです!やめてください!!」


 腕を突っ張って抵抗するローデリヒをものともせず、国王は宥めるように背中を軽く叩く。べティーナも「そうですねえ」とのんびりと笑う。


「アロイスは産まれた時はとっても小さかったのよねえ」

「ああ。赤ん坊なんて見る機会がなかったからな。こんなに小さいものかと驚いたが、健康で育ってくれてよかった」

「ええ。アロイスが産まれる時、窓の外に見える薔薇の蕾が咲くのを見れるのかな、なんて思ったわ」

「べティーナはよく頑張ったよ」


 片腕でローデリヒを抱き上げながら、もう片方の腕でべティーナの腰を抱く。べティーナも国王に身を寄せて、ローデリヒの頭を撫でた。
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