この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】

人の形。

「母上!今日は近衛の団長に体術を教えてもらっていました。難しいです」

「頑張っているのね」


 夕食の為にテーブルにつきながら、ローデリヒは嬉々とした表情で母親に今日の出来事を報告する。


「はい!」

「アロイスはすごいわ」


 なんでも褒めてくれる母親に聞いて欲しくて、やや身を乗り出し気味にローデリヒは口を開く。

 その頃には後宮ではなく、王城に一室を与えられていた。男子禁制の後宮に男の家庭教師は呼べない。
 王子として決められている分の勉強分を終わらせ、後宮に通って今日の出来事を母親に語っていた。後宮に近い位置にわざわざ部屋を貰ったお陰もある。

 流石に料理が運ばれてきた頃には居住まいを正したローデリヒだったが、運動をしてきた成長期の子供だ。お腹が減っていて、そちらに気を取られる。
 べティーナもその様子に口を緩める。

 簡単に祈りを捧げてから、一気に運ばれてきた料理に手を付ける。サラダから食べ始めたべティーナとは対照的に、子供らしく野菜が苦手だったローデリヒは、肉がゴロゴロ入っているシチューへと意識を向けた。
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