この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「お前のせいじゃない」
「でも……」
「ほら、そう気負うな」
ぐしゃっと国王は自身と同じ色をしたローデリヒの髪を乱す。「でも……」とローデリヒは声が喉に張り付くのを感じた。とても言いづらかった。だが、それでもローデリヒは聞いたのだ。
「母上が言っていたんです。僕が産まれた時、人の形をしていなかったって」
国王の手がピタリと止まる。あとはもう勢いだった。
「どうして僕は生きているんですか?」
周りの喧騒が遠い。近衛騎士達は国王とローデリヒから離れた位置で休憩をしている。親子の時間を邪魔しようとする者はいない。
頭の上に乗ったままの手が動かなくなったのを感じて、ローデリヒは高い位置にある父親を見上げた。自分と同じ色の瞳がやや見開かれている。予想外の疑問だったらしい。
だが、国王は我に返るのが早かった。小さく息をつく。
「それは、べティーナから聞いたのか?」
「……はい。虚弱体質だからって」
べティーナの方がよっぽど虚弱体質だ。すぐに季節風邪にかかるべティーナに会っても、ローデリヒは何ともない。
「でも……」
「ほら、そう気負うな」
ぐしゃっと国王は自身と同じ色をしたローデリヒの髪を乱す。「でも……」とローデリヒは声が喉に張り付くのを感じた。とても言いづらかった。だが、それでもローデリヒは聞いたのだ。
「母上が言っていたんです。僕が産まれた時、人の形をしていなかったって」
国王の手がピタリと止まる。あとはもう勢いだった。
「どうして僕は生きているんですか?」
周りの喧騒が遠い。近衛騎士達は国王とローデリヒから離れた位置で休憩をしている。親子の時間を邪魔しようとする者はいない。
頭の上に乗ったままの手が動かなくなったのを感じて、ローデリヒは高い位置にある父親を見上げた。自分と同じ色の瞳がやや見開かれている。予想外の疑問だったらしい。
だが、国王は我に返るのが早かった。小さく息をつく。
「それは、べティーナから聞いたのか?」
「……はい。虚弱体質だからって」
べティーナの方がよっぽど虚弱体質だ。すぐに季節風邪にかかるべティーナに会っても、ローデリヒは何ともない。