この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「アロイスが目の前で血を吐いた時、またこの子を失ってしまうのかって怖くなったのです。ディートヘルム様には申し訳ないけれど、他の側室様との子供を次の王に付けて欲しいわ」
「べティーナ……貴女」
ハイデマリーの声が険しいものに変わる。
「貴女、陛下の事が好きではなかったの?あれほど、陛下を愛しているというお芝居のような台詞を吐いて、陛下の側室になったのでしょう?!」
「ええ。好きです。今でも好き。……でもね?好きな人が他の女の人の所にも行くのって、辛くて辛くて仕方なくて、段々と好きっていう気持ちが穏やかになっていったの」
声を荒らげたハイデマリー。べティーナは落ち着いたペースを崩すことなく続ける。
「穏やか……とは違うかもしれません。段々と麻痺してしまったわ。一々嫉妬する自分にも、疲れてしまった。私は疲れてしまったんです」
「…………分からないわ。その感情が。陛下の寵愛は貴女の元にあるというのに?」
「ハイデマリー様。恋愛と寵愛は違うのです。私にはもう、ずっと前からアロイスしかいない。だから、アロイスが居なくなってしまったら、私は生きていけない。アロイスが特別でなくてもいいの」
べティーナの言葉は思っていた以上に重かった。母の為に今で頑張って来たことは、本当に母の為だったのだろうか。
「べティーナ……貴女」
ハイデマリーの声が険しいものに変わる。
「貴女、陛下の事が好きではなかったの?あれほど、陛下を愛しているというお芝居のような台詞を吐いて、陛下の側室になったのでしょう?!」
「ええ。好きです。今でも好き。……でもね?好きな人が他の女の人の所にも行くのって、辛くて辛くて仕方なくて、段々と好きっていう気持ちが穏やかになっていったの」
声を荒らげたハイデマリー。べティーナは落ち着いたペースを崩すことなく続ける。
「穏やか……とは違うかもしれません。段々と麻痺してしまったわ。一々嫉妬する自分にも、疲れてしまった。私は疲れてしまったんです」
「…………分からないわ。その感情が。陛下の寵愛は貴女の元にあるというのに?」
「ハイデマリー様。恋愛と寵愛は違うのです。私にはもう、ずっと前からアロイスしかいない。だから、アロイスが居なくなってしまったら、私は生きていけない。アロイスが特別でなくてもいいの」
べティーナの言葉は思っていた以上に重かった。母の為に今で頑張って来たことは、本当に母の為だったのだろうか。