この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「下手にべティーナの子供を王位につけない、なんて言うべきではなかったな。本人と周囲を安心させる為だった」

「たぶん私も同じことしましたわ」

「やはり、私達と彼女には大きく違っているのだろうな。……いや、私達が違うのか」


 国王は人ではない。
 人々を導く光である。
 人々の上に立つのが凡人であってはならない。
 人間として在ってはならない。

 だから、国王は誰か特定の者を特別扱いしない。気を遣うこともない。
 何故なら、国民を平等に照らす希望の光なのだから。


「最低限、次代の国王としての教育は受けさせたいと思っているのだが……」


 そうして彼らは間違える。
 何を間違えているのか、それすらも分からないまま。



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「母上の体調はまだ戻らないのか?」


 後宮の一室の前で、ローデリヒは眉を寄せた。侍女が扉の前で立ち塞がっている。


「殿下。べティーナ様は熱が高いのです。お控え下さい」

「ずっとじゃないか!」


 そう言われ続けて、七日は会っていない。流石にローデリヒの胸に焦燥感が湧く。
 母親は体が弱い。なのに、そんなに高熱が続いて大丈夫な訳がない。

 自分の知らない所で大変なことになっているのではないか、と怖かった。
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