この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
(後編)離宮へ――

参ります?

「え、ティーレマン子爵の元に嫁いだんですか?」


 ローデリヒ様に手渡された書状を読んで、私は声を上げた。

 私達はゆっくりの日程で離宮へと向かっていた。
 ローデリヒ様は媚薬を盛られていたけれど、体調はすぐに回復。私の安定期を待っての事だった。

 アーベルが深夜寝付かなくて生活リズムが崩れてしまったのか、当初の予定通りにはいかなくて、少し遅れてしまったけど。


「ああ。正確に言うと下賜だが……」


 ティーレマン子爵と言うと……国王様よりも確か年上で、私達くらいの年頃の息子が三人くらいいた気がする。前に覚えた貴族名鑑の記憶から引っ張り出してきた情報だけど、優しそうなおじさんだった。

 ティベルデ・フェルナンダ・キュンツェルって名前の国王様の側室の人の嫁ぎ先が、ティーレマン子爵らしい。


「温厚で公正な人柄。跡継ぎの心配もない。前の奥方は病気で先立たれてしまったそうだが、非常に仲のいい夫婦だったという事だ。後妻を迎えたというよりは、息子ばかりだったから娘が出来たようで嬉しいと言っていた」

「な……なるほど」


 なんというか、私と同世代なので犯罪臭が凄いする。
 前世だったらほぼアウトのようなものだよね。
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