この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「監視によると、元側室は最初はビクビクしていたが、今は穏やかに過ごせているとの事だった」

「それならいいんですけど……」


 私は胸を撫で下ろした。そりゃあ、親戚がグルになって色々とローデリヒ様にちょっかい掛けてきた事に思うことはあるけど、そのせいで私と同世代の女の子が身売りみたいな事をされるとちょっと寝覚めが悪い。
 一応未遂なのだし、あの子お茶会でもずっと顔色悪くしてたし……、という事であんまり重い罪にはしないで欲しいとお願いしておいた。側室って大変そうだよね。

 国王様の後宮には沢山側室いるけど、ローデリヒ様には側室がいないし、本人に側室を迎える気がない。
 私と結婚した時は十七歳だったのだし、一人か二人くらいは側室いてもおかしくはない年頃だったよなあと思いつつ、結婚してからも基本的に毎日一緒に寝ているので、この人に女の影が全く見えない事に気付いた。

 ……いや、流石に彼女の一人や二人くらいは……いたよね?無愛想だけど王太子だし、無愛想だけどイケメンだし。


「なんだ?そんなに気になるのか?」


 ローデリヒ様は自身の膝を枕に寝ているアーベルの髪を梳きながら、眉間に皺を寄せる。


「いえ……、ローデリヒ様って恋人いた事あるんですか?」

「ない。一体何の話だ……?」
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