この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「先手を打たせてもらった。殺しまではしていないが、待ち伏せしていた者達は《光雨矢》で無力化出来たはずだ。……だが、近衛騎士達は味方か敵の区別が付かない。撹乱に留めている」

「近衛騎士が敵……って」

「……すまない。こんな事になって」


 ローデリヒ様の海色の瞳が、陰った。
 私は慌てて首を横に振る。


「あ、いや……、近衛騎士が敵ってびっくりして……。ローデリヒ様も驚きですよね?!」

「いや、知っていた」

「えっ」


 ローデリヒ様の晴れたような海色の瞳は、濁ったように暗い色をしている。ほんの僅かに揺れて、悩むように伏せられた瞼の奥に消えた。


「アーベルが視た未来は、簡単には変えられないということか……」
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