この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
私が動けなくなったら、お腹の赤ちゃんもアーベルも危険に晒してしまうから。
私が硬い顔をしていたのか、ローデリヒ様は少しだけ苦笑いをした。
「最悪な未来を回避する為に、16歳のアーベルが命懸けで来た。だから、そう悪い事にはならないだろう」
あ、そっか。
最悪を回避する為にアーベルがわざわざ未来から来たのだとしたら、この状況は最悪ではないって事になる。
むしろ、ベストではないかもしれないが、まだマシな展開なんじゃないだろうか。
ローデリヒ様が慣れたように馬に乗る。
そして、私へ片手を差し出した。
見上げたローデリヒ様はまだ《千里眼》を発動し続けている。眉間に皺を刻みつつ、それでももう海色の瞳には先程のような陰はない。
「息子に命を懸けさせている状態だ。私も自分が持ちうる全てを賭す。
――だから、アリサは自身とアーベルとお腹の子の事だけを考えていてくれ」
「……はい、」
ローデリヒ様の手を取り、横抱きにされる。
アーベルはずっと神妙な顔つきで大人しくしていた。
この状況を理解しているように。
「行くぞ。体調が悪くなったらすぐに言え」
「は、はい」
私が硬い顔をしていたのか、ローデリヒ様は少しだけ苦笑いをした。
「最悪な未来を回避する為に、16歳のアーベルが命懸けで来た。だから、そう悪い事にはならないだろう」
あ、そっか。
最悪を回避する為にアーベルがわざわざ未来から来たのだとしたら、この状況は最悪ではないって事になる。
むしろ、ベストではないかもしれないが、まだマシな展開なんじゃないだろうか。
ローデリヒ様が慣れたように馬に乗る。
そして、私へ片手を差し出した。
見上げたローデリヒ様はまだ《千里眼》を発動し続けている。眉間に皺を刻みつつ、それでももう海色の瞳には先程のような陰はない。
「息子に命を懸けさせている状態だ。私も自分が持ちうる全てを賭す。
――だから、アリサは自身とアーベルとお腹の子の事だけを考えていてくれ」
「……はい、」
ローデリヒ様の手を取り、横抱きにされる。
アーベルはずっと神妙な顔つきで大人しくしていた。
この状況を理解しているように。
「行くぞ。体調が悪くなったらすぐに言え」
「は、はい」