この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「父親に正解なんかない。それは前々から理解している。自分のことを父親失格だと思うことも、自己満足の域に過ぎない」


 私を抱き上げているローデリヒ様の腕に力が篭る。
 苦しくなく、わたしを気遣うような位の加減で。


「それでも、手探りで最適解を見つけ続けて、アーベルにとって、お腹の子の良い父親(・・・・)になりたい。……だから、私は私にとって出来る最大限を尽くす」


 ローデリヒ様の上着に皺が出来ていた。どうやら力強く握ってしまっていたみたい。
 困ったな、なんだか泣きそうだ。
 ローデリヒ様だって、まだまだ若い。16歳のアーベルとそう歳は変わらないのだ。まだ親になった歴も浅くて、ようやく初心者マークが取れるか取れないかくらい。

 真剣に子供達と向き合ってくれている。
 親になろうと努力している。


「……私も、一緒に探していいですか?最適解」


 ローデリヒ様がほんの少しだけ目を見開いて私の方を一瞬見た。私の声が上擦っていたから。


「きっと1人で手探りで見つけ出すより、2人で迷いながら探した方が見つかりやすいから」


 フッとローデリヒ様は目元を緩めて頷いた。


「ああ、勿論だ。――私達は、夫婦なのだから」
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