この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「疲れたか?」

「大丈夫です!」


 チェックインを済ませたらしい。ローデリヒ様がアーベルを片腕に抱いて、片方で鍵を握っている。
 難しい顔をしていた私をローデリヒ様は、心配そうに見下ろした。まあ、確かに疲れたと言えば、色々ありすぎて疲れちゃってるけど。


「体調が悪くなったらすぐに言え。大事な身体だ。無理だけはするな」

「勿論ですよ」


 安定期とは言え、お腹に子供がいるからあんまり動き続けるのも大変だし、今のところ順調だけどこれから何があるか分からないし。
 取り敢えずローデリヒ様のフォローがあるから、疲れも少ない方なんだと思う。むしろ、ローデリヒ様の方が疲れているんじゃないだろうか。


「ほら、アーベル。今日はみんなでお泊まりだ」

「おー……と?」


 ローデリヒ様の言葉を返したアーベルは、キョトンと目を丸くしている。
 流石にお泊まりっていう意味は分からなかったかあ、とその光景をほのぼのと眺めながら気付いた。

 私とローデリヒ様、アーベルとお泊まりって……何気に初めてじゃないだろうか?
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