この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 ヴァーレリーが真剣な表情で頷く。イーヴォは顔をしかめて短い髪の毛をくしゃりと握る。


「殿下の嫌な予感って当たるんだよなあ……」

「そんな事は無い」


 杞憂で済んだらいい、というだけだ。すっかり冷めてしまっている紅茶を飲みながら、改めて手紙の内容に目を通す。

 一ヵ月王城を開けている時に来た手紙。特に断る理由もなく、友好国なので国王が既に許可を出している。手紙が来た時にローデリヒが王城にいても、同じ選択になっていただろう。

 時期は今から約二週間後。

 アルヴォネンの王太子ルーカス・コスティ・アルヴォネンと王太子妃ティーナ・サネルマ・アルヴォネン。


「殿下が今まで嫌な予感がすると言ったこと、百発百中当ですよ!今回の遠征だって予想よりも少し時間が掛かったし」

「たまたまだろう?」

「いえ、それ以前にも色々と殿下の予測が当たってるので、俺の周りでは百発百中の王太子っていう異名が付けられています」

「なんだそれは」
< 57 / 654 >

この作品をシェア

pagetop