この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 だが、短すぎる人生だと分かっていたからこそ、気になったのだ。


「健康的な体も、そこそこの魔力も持って、自由に色んな事をして生きられるのに、復讐なんかに人生捧げちゃうような奴の思考回路が分かんなくてさ?だから、気になったんだよなぁ」


 気になった。ただ、それだけ。
 失う以前に、何も持たなかったエーレンフリートだからこそ出来た行動だった。


「オレはあんまり長くないから、最後に知りたいなって」


 幼い子供が抱くような、純粋な興味。
 エーレンフリートの琥珀色の瞳には憎悪も、悪意も、殺意も浮かばない。


「だから協力したに過ぎないんだよ」


 国王――ディートヘルム・エーリアス・キルシュライトは、静かに聞き入っていた。目を閉ざし、ひとつ息をつく。
 次に瞼を開いた時は、鋭い視線をエーレンフリートに向けた。


「そうか。――なら、仕方がない」


 国王を縛っていた縄が焼け焦げた臭いを発しながら、消えた。ゆっくり立ち上がる。


「あれ?元から知ってたんじゃね〜の?」


 エーレンフリートも面白可笑しそうにその様子を眺めながら、やや構えるように椅子から腰を上げた。
 そして、この場にいない唯一の人間の名前を告げる。


「ハイデマリーさんがいねぇのがその証拠だろ?」
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