この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「それでも確定させて近衛に渡すまでは数日は要する予定だったが、数日あればある程度の反乱の準備は出来る。草案の所在地を直接的でないにしろ教えたのは、父上だったらしい。アーベルがわざわざ過去に来てまで間違えた(・・・・)なんてことは思えない、と父上は仮説立てていたようだ」


 国王様……一体何を考えてたんだ……。


「話を少し戻すが、部屋の前には見張りの近衛騎士が2人共倒れ伏していた。1人は2年目の新人。1人は20年のベテランだった。だが、ベテランの方は倒れる寸前、異変を察知していたそうだ」


 ローデリヒ様が眉間に皺を寄せる。


「その者が言うには、エーレンフリートならばもっと完璧に隠し通すらしい。つまり、エーレンフリートよりも魔法に未熟な者――、アーベルが犯人に名前が挙がる。父上とアリサがアーベルと別れた時刻と、真っ直ぐに私の私室に向かった時間を考慮に入れると、アーベルの可能性が非常に高い」


 かなり軟派でチャラそうなイメージしかないエーレンフリート様。やっぱり実力は近衛騎士団長を務めるだけあるということなんだ……。


「アーベルが草案目当てに私の私室へと入り、鍵を施錠。施錠後にエーレンフリートが入ってきた、という筋書きであれば、エーレンフリートが嘘を付いているという事になる。
 逆に、アーベルが施錠をせずにエーレンフリートが開けっ放しだったから入って来たのだとすると、アーベルが嘘を付いている事になる」
< 576 / 654 >

この作品をシェア

pagetop