この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
家族旅行みたいな?(他)
ローデリヒ様の問いに、アーベルは答えなかった。
まあそりゃそうだよね……。幼児だし。
「とーたま!」
代わりに両手を伸ばして抱っこをせがんでいた。ローデリヒ様もアーベルを抱き上げて、膝へと乗っける。
ギュッと父親のシャツを掴んだアーベルは、木にしがみつくコアラみたいな格好になっていた。
ローデリヒ様は片手でアーベルを支え、片手を私の方へと伸ばしてくる。
「キツいか?」
指の背が額にピタリとくっ付いた。私の額よりほんの少しだけ冷たい。そのまま顔に掛かる前髪を避けるようにして手が動いた。私の表情を覗き込むようにして、見下ろしてくるローデリヒ様の瞳には心配そうな色が浮かんでいる。
「いや……、ちょっと疲れたなあって……」
私は指先から伝わってくるひんやりとした感覚が気持ち良くて、目を閉じた。
あー、なんか寝ちゃいそう……。
「少し寝ていた方がいいだろう。……無理をさせたからな」
薄らと開けた視界のローデリヒ様は眉間に皺を寄せる。
「……大丈夫ですよ。慎重にならなきゃいけない問題だっていう事は分かっています。……きっとこれは」
私が足でまといなだけ、という言葉は続かなかった。
ローデリヒ様が更に険しい顔になっていた。
まあそりゃそうだよね……。幼児だし。
「とーたま!」
代わりに両手を伸ばして抱っこをせがんでいた。ローデリヒ様もアーベルを抱き上げて、膝へと乗っける。
ギュッと父親のシャツを掴んだアーベルは、木にしがみつくコアラみたいな格好になっていた。
ローデリヒ様は片手でアーベルを支え、片手を私の方へと伸ばしてくる。
「キツいか?」
指の背が額にピタリとくっ付いた。私の額よりほんの少しだけ冷たい。そのまま顔に掛かる前髪を避けるようにして手が動いた。私の表情を覗き込むようにして、見下ろしてくるローデリヒ様の瞳には心配そうな色が浮かんでいる。
「いや……、ちょっと疲れたなあって……」
私は指先から伝わってくるひんやりとした感覚が気持ち良くて、目を閉じた。
あー、なんか寝ちゃいそう……。
「少し寝ていた方がいいだろう。……無理をさせたからな」
薄らと開けた視界のローデリヒ様は眉間に皺を寄せる。
「……大丈夫ですよ。慎重にならなきゃいけない問題だっていう事は分かっています。……きっとこれは」
私が足でまといなだけ、という言葉は続かなかった。
ローデリヒ様が更に険しい顔になっていた。