この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「お主が選んで進んだ道だ。私がどうこう言えはしない」

「……へえ?」


 いつものふざけた雰囲気はどこにもない。エーレンフリートは片方の眉毛を上げた。


「だが、私もこのキルシュライト王国の国王だ」


 予備動作はなかった。
 呟きと呼応するように粒子のような光が国王の手のひらに集まる。物理的な質量を持たないはずのそれは、剣の形を成した。それを軽々と国王は片手で持って真正面に構える。


「だから、人々を導く光である。――正しい道へ」

「……なるほどね?陛下が直々にオレを導いてくれるってこと?泣いちゃうね〜」


 エーレンフリートも口元に笑みを作りながら、上に向けた手に光を集める。それが両手で抱えられるくらいの球体になった頃だった。

 開戦の合図などない。

 エーレンフリートが無造作に手を振るう。目に見えない程のスピードで飛んだ針を、全て国王は剣で叩き落とす。そして口ずさむ。


「《光雷撃(ライトニング)》」


 光が走った。轟音が響く。エーレンフリートの背後の壁に複数の亀裂が入る。抉れた壁の破片が落ちる少し前。エーレンフリートの目前に国王が迫る。
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