この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】








「………………はれ?」


 いつの間にか窓からはオレンジ色の光が射し込んでいた。一瞬何が起きているのか全く分からなかった。ボーッと眩しいなあ、と思いながら窓からの光を眺める。段々と目が覚めてきて、目を瞬かせた。

 あれ、私、寝てた?
 変な時間に寝ると逆に疲れてしまう気がする。ギシッと鳴るような体を動かして上体を起こす。ローデリヒ様とアーベルの姿は部屋にはなかった。

 どこ行ったんだろ……。
 やや怠い体でベッドから下りた。喉も乾いたし……、宿のロビーとかにいるのかな?いや、もしかしたらご飯食べてるのかもしれない。

 そういえばここの宿屋って、夕御飯は食堂的な所で出される感じ?この世界の宿屋の方式が分からない。どうするんだろ?

 グルグルと考えてると、洗面所から音が聞こえてくる。無意識に音につられて覗いてみると、洗面所というよりお風呂場だった。シャワーの音。

 そっと扉を開ける。同時にバッと中の人がコチラを振り向いて、バッチリと目が合った。
 月光のような金髪は濡れて水が滴り落ちている。海色の瞳は驚きで見開かれていた。

 そうですね。ローデリヒ様ですね。
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