この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「そっか、アーベル、心配掛けてごめんね?」


 ヨシヨシ、と濡れた頭を撫でる。気持ち良さそうにされるがままだったが、ドレスの裾を引っ張られた。お風呂の方へ。


「あーたまも!」

「え、母様もお風呂?」


 首を傾げた私に、ローデリヒ様がアーベルの気持ちを代弁する。


「アリサも一緒にお風呂に入って欲しいんだろう。どうする?一緒に入るか?」


 アーベルを宥めながら、私は頷いた。


「そうですね。私もお風呂入りたいですし、一緒に――」


 はた、と重大なことに気付いて言葉が止まった。

 あれ?これってローデリヒ様ともお風呂一緒に入るという事では?

 同じことに思い至ったローデリヒ様も固まる。
 瞬間、洗面所に恐ろしい程の沈黙が降りた。
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