この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 ふと国王様を思い浮かべる。オブラートに包みまくって小太りの姿を。走るのにしたって、ドスドスと激しい……非常に重みがある音を立てたり……、イーナさんにさりげなくセクハラしていたり……、ローデリヒ様曰く、エーレンフリート様を押し倒していたり……。

 だ、駄目だ……。まともな姿が浮かばない……!

 頭を抱えた私を見かねて、ローデリヒ様もフォローをした。

「ハイデマリー殿の言う通り、父上はアレでも一国の国王だからな……。アレでも剣の天才で、アレでも光魔法に関しては国一番の使い手だ。エーレンフリートに敗れるとは思えん……」

 アレしか言ってないし、ローデリヒ様にしては随分と歯切れが悪かったけれど。
 私もエーレンフリート様にやられる国王様が思い浮かべないのは確か……、というより、真面目に反乱を制圧している姿が思い浮かばない。

「問題はそれよりもわたくし達よ。長い間こんな犬小屋みたいな所に留まっているのは得策ではないわ」

 ハイデマリー様が考え込むように瞳を伏せる。いや、犬小屋って……、ローデリヒ様の馬小屋も大概だけどさ。
 それよりも、だ。

「そういえば、ハイデマリー様は何故ここに……?」

 起きたばっかりで頭が全然働いていないのだけれど、よく考えたら国王様の側室のハイデマリー様が何故こんな所にいるのだろう?
 そんな簡単に後宮から出れないはずだよね?
 反乱に乗じて逃げてきた?いや、流石にココシュカの街は、すぐに辿り着ける距離じゃないはず。
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