この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 同情なんていらなかった。
 哀れみなんていらなかった。

 私は修道院にでも逃げ込んで、ただ静かに生を終えたかった。
 それが、貴族令嬢としての役割なんて到底担えそうにない私が取れる、最後の抵抗だった。

 ルーカス殿下との婚約が破棄された時、私が密かに喜んだことを、ローデリヒ・アロイス・キルシュライト殿下は知っているのだろうか?』


 社交界で流れる噂?……ぜ、全然分からない。
 というか、ルーカスって誰だろう。アルヴォネンっていうのは国……、アリサの出身地かな?

 一つだけ確実に言えることは、アリサがローデリヒさんとの結婚を望んでいなかったという事だ。

 貴族令嬢の役割もあまりよく分からない。ただ、アリサは貴族令嬢としての役割が担えないから、静かに生きたいって事だったのかな?

 情報量が足りなさ過ぎる。ゼルマさん辺りにそれとなく聞いてみようかな。
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