この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 ちょうどその時、部屋がノックされて気楽に返事をする。ゼルマさんだと思ってたけれど、声と入ってきた姿は全く知らない人だった。

 あれ、これつい最近にも同じような事をした気が……。


「失礼します。ローデリヒ殿下のご命令でお傍に侍る事になりましたヴァーレリーと申します」


 ワイシャツにベスト。丈の長い落ち着いた色合いの上着を羽織った子が現れる。栗色の瞳はパッチリしていて、女の子で言うところのショートヘアをしていた。

 すごく可愛い。え、女の子?男の子?どっち?
 ローデリヒさんと似たような服着てるから男の子かな?
 身長も私より少し高いくらい。たぶん年下かな?


「アリサっていいます。よろしくお願いしますヴァーレリーさん」

「ヴァーレリーで大丈夫ですよ」


 真顔で彼は言った。なんだか少し取っ付き難い感じがする。
 見るからに年下っぽいし、ヴァーレリーさんよりもヴァーレリーくん?ヴァーレリーちゃんの方が何故かしっくりくる。可愛すぎる。
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