この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
火のついたように泣き始める。慌ててあやそうと両手で抱き直して、私の体が傾いた。
突然、私の下の石畳が無くなったようだった。沼にでも嵌ったみたいに呑み込まれていく。
日が照っていると必ず出来る影が、私の影が、私を引き摺りこんでいる。他の影よりドス黒く、底無し沼のように変わっていた。
「アリサッッ!!」
呑まれた足が引き抜けない。それどころか、動かせない。腕の中のアーベルだけでも逃そうと、私の服を掴んでいる小さな手を剥がしてローデリヒ様の方へと差し出す。
ローデリヒ様が掴もうと私の方へと腕を伸ばす。
届かなかった。影から黒い手が沢山伸びてきて、アーベルを引き摺り込む。
「ッ、待てッッ!!」
「危険ですッ!!殿下!!」
ローデリヒ様が騎士に羽交い締めにされる。ローデリヒ様と触れそうだった手が、離れていく。
あと少しで届きそうだったのに。
目の前が闇に覆われる前に見えたのは、空を掴む手と、今にも泣き出しそうにも似た表情のローデリヒ様だった。
突然、私の下の石畳が無くなったようだった。沼にでも嵌ったみたいに呑み込まれていく。
日が照っていると必ず出来る影が、私の影が、私を引き摺りこんでいる。他の影よりドス黒く、底無し沼のように変わっていた。
「アリサッッ!!」
呑まれた足が引き抜けない。それどころか、動かせない。腕の中のアーベルだけでも逃そうと、私の服を掴んでいる小さな手を剥がしてローデリヒ様の方へと差し出す。
ローデリヒ様が掴もうと私の方へと腕を伸ばす。
届かなかった。影から黒い手が沢山伸びてきて、アーベルを引き摺り込む。
「ッ、待てッッ!!」
「危険ですッ!!殿下!!」
ローデリヒ様が騎士に羽交い締めにされる。ローデリヒ様と触れそうだった手が、離れていく。
あと少しで届きそうだったのに。
目の前が闇に覆われる前に見えたのは、空を掴む手と、今にも泣き出しそうにも似た表情のローデリヒ様だった。