この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
未練は沢山あるでしょう?
ローデリヒ様と同じ、月の光を集めたような色の髪。
背中しか見えないけれど、その容姿はローデリヒ様に非常に良く似た、でも少しだけ幼いのを私は知っている。
「アー、ベル……?」
私を庇うように男との間に入って、男の動きを止めていた。カレルヴォの表情が忌々しげに歪められる。それでも、2人に動きはない。一触即発の空気が漂っていた。
ポタ、と地面に雫が落ちる音がやけに大きく響く。
つられて下を向くと――、
鮮やかな赤色がポタポタと石の床に弾けて広がりかけていた。
「アーベルッ?!」
血相を変えて叫んだ私をきっかけに、カレルヴォが離れる形で2人は距離をとる。
「ッ」
小さく呻き声を上げたのは、アーベルではなかった。よくよく見ると、カレルヴォの手から銀の刃が生えている。
いや、生えているように見えるけど、手のひらを貫通しているのだ。黒い手袋をしているから怪我の状態が分からないけれど、指先から少なくない量の血が流れている。
背中しか見えないけれど、その容姿はローデリヒ様に非常に良く似た、でも少しだけ幼いのを私は知っている。
「アー、ベル……?」
私を庇うように男との間に入って、男の動きを止めていた。カレルヴォの表情が忌々しげに歪められる。それでも、2人に動きはない。一触即発の空気が漂っていた。
ポタ、と地面に雫が落ちる音がやけに大きく響く。
つられて下を向くと――、
鮮やかな赤色がポタポタと石の床に弾けて広がりかけていた。
「アーベルッ?!」
血相を変えて叫んだ私をきっかけに、カレルヴォが離れる形で2人は距離をとる。
「ッ」
小さく呻き声を上げたのは、アーベルではなかった。よくよく見ると、カレルヴォの手から銀の刃が生えている。
いや、生えているように見えるけど、手のひらを貫通しているのだ。黒い手袋をしているから怪我の状態が分からないけれど、指先から少なくない量の血が流れている。