この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】

幸せなのでしょう?

「つまりだな。ワシらはアーベルが最悪の未来を回避する為の最善の選択をしていると思っていた訳だが……、アーベルは自分のいる未来へ向かう為の過去を作りに来たのじゃ」

 バリバリとクッキーを頬張りながら、国王様は結論を出した。クッキーの破片がアチコチに飛び散っている。その行儀の悪さで国王やっているの大丈夫なんだろうか。
 父上汚いです、とローデリヒ様も同じような事を思っていたようで、ゴミを見るような目をしていた。

 あの後――、ローデリヒ様は後処理に奔走しつつ、私達は安全な場所らしい近くの貴族の豪邸にお邪魔している。
 なんで国王様がこんな所に居るかと言うと、光の速さで王城から飛んで来たんだと。意味がよく分からない。

「……祖父様の仰る通りです。僕は、自分のいる未来へ行くように過去を改変しました。最初にやってきた時も、全て計画の内でした」

 私の向かいのソファーに座っていたアーベルは、膝の上に置いた拳を握り締めた。

「過去に起こった出来事1つで、未来は簡単に変わってしまう……。だから、現在(過去)を変えたくなくて」
「アーベル。それは、お前とアリサの危険ですら必要だった事なのか?」
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