この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 国王様とローデリヒ様が何やら騒がしくしている中、ハイデマリーさんがそっとアーベルの頭を撫でる。そして、赤ちゃんをじーっと見つめた。

「撫でても大丈夫ですよ」
「そうなの」

 口調こそは素っ気なかったけれど、おそるおそるハイデマリーさんはちっちゃい頭に手を伸ばす。
 壊れ物を扱うような手つきで撫でた瞬間、キツい顔立ちの彼女が、ふんわりと優しく微笑んだ。その表情は、手と共にすぐに引っ込める。

「しっかり体を休めるのよ」
「は、はい……。ありがとうございます」

 ハイデマリー様はそう言って、国王様を引き摺るように連れ帰って行った。嵐のようだったな、と思ったのは私だけではないはず。

 ローデリヒ様も若干くたびれたような感じだったけど、少しだけ肩を竦めた。

「煩くしてすまない。……あの人達が1番、出産に関しては心配症だからな」
「そうなんですか?」
「ああ。……理由を話すと長くなるから、また、時間がある時に」
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