この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
 そっか。そうだよね。
 人の命よりも大事な仕事なんてないよね。
 初めて聞く仕組みだったから、イマイチ事の重大さが分からない。


「……そうですね。ごめんなさい。気を付けます」

「いえ……、申し訳ありません。私こそ分を弁えていませんでした。記憶が混乱されていても、大事なお身体に代わりはないので、お気をつけ下さい」


 ヴァーレリーちゃんが深々と礼をする。
 やっぱり私、この状況をどこか他人事のように思っている。

 妊娠の心当たりは勿論、ファーストキスだってまだだし、彼氏すら出来たことない。
 結婚はまだまだ先にするものだと思っていた。思っていたのに、いつの間にかしちゃってた。


「いえ、私の実感がないからなんだと思います。なんだか、少しここでの当たり前が、私の中の当たり前と違うみたいで」


 苦笑いをこぼす。お城にしたってそうだ。
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