この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
「私、王太子様と王太子妃様ってお城に住むものかと思ってましたし……」


 現実は二階建ての立派なお屋敷だ。図書室もあるし、とにかく広いし、部屋数とんでもなくありそうだけど。
 私の言葉にヴァーレリーちゃんは首を横に振って、塀の向こうの城を示す。


「いえ、通常王太子殿下と妃殿下はあちらの王城に住みますが……」


 …………んっ?んんっ?
 えっ、それじゃあこの屋敷は一体何?
 そしてこの塀は何?

 なんだかすごく……、隔離されている感じがします。

 目の前に立ちはだかっている物理的な壁を見上げていると、舌っ足らずな声が庭に響いた。


「あーたま!」


 ヴァーレリーちゃんと共に声の方へ向くと、ぷくぷくとした真っ白な肌に薄い金髪のちっちゃい子供ーーいや、まだ歩けるようになったばかりの赤ちゃんがいた。
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