この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
何かを決めたように私の方へ向き直って、ローデリヒさんはふっとほんの少しだけ寂しそうに、柔らかく微笑んだ。
「今度、貴女の元婚約者が王城にやってくる。私も貴女の元婚約者もその妻も、全員が少なからず貴女の忘れるべき過去と関係している。
貴女は何かやりたい事があれば遠慮なく言うといい。もし貴女が私と別れたいと言うならば、離縁だって受け入れる。貴女の不利にならないよう、最大限に動くつもりだ。子供についての意向も聞き入れる。生活の保障だってする。
貴女は、ーー過去から離れた方が良いのかもしれない」
フラッシュバックのように甦る身に覚えのない記憶。
明らかに異常だって事は、自分自身でも分かっている。
忘れた方がいいとローデリヒさんは言ったけれど、私も知らない方が良いんじゃないかと思ってしまう。
だって、王太子様って離婚なんて滅多な事じゃないと出来ないんでしょ?
それに、だ。
私のまだぺったんこのお腹を触って父親の顔をしていた彼が、アーベルくんを可愛がって親バカしている彼が、簡単に子供を手放そうだなんて思わないはずだ。
これって、やっぱり相当の事だよね?
「今度、貴女の元婚約者が王城にやってくる。私も貴女の元婚約者もその妻も、全員が少なからず貴女の忘れるべき過去と関係している。
貴女は何かやりたい事があれば遠慮なく言うといい。もし貴女が私と別れたいと言うならば、離縁だって受け入れる。貴女の不利にならないよう、最大限に動くつもりだ。子供についての意向も聞き入れる。生活の保障だってする。
貴女は、ーー過去から離れた方が良いのかもしれない」
フラッシュバックのように甦る身に覚えのない記憶。
明らかに異常だって事は、自分自身でも分かっている。
忘れた方がいいとローデリヒさんは言ったけれど、私も知らない方が良いんじゃないかと思ってしまう。
だって、王太子様って離婚なんて滅多な事じゃないと出来ないんでしょ?
それに、だ。
私のまだぺったんこのお腹を触って父親の顔をしていた彼が、アーベルくんを可愛がって親バカしている彼が、簡単に子供を手放そうだなんて思わないはずだ。
これって、やっぱり相当の事だよね?