この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。【完】
月明かりが辺りを照らしていた。どこからか虫の音が聞こえる。
コツ、と靴音を響かせて貴族子息の格好をした小柄な人物は、とある場所で立ち止まった。
栗色の瞳の向かう先は、塀。人の背丈よりも高いそれは、まだまだ建てられたばかりで白かった。
「ヴァーレリー?どうしたんだ?こんな遅くに」
「……イーヴォ」
その人の存在に気付いたのは、赤髪の青年。がっしりとした体格で、一目見ただけで筋肉が程よく付いているのが分かる。
騎士の中でエリート中のエリート。近衛騎士の制服に身を包んだイーヴォは、自身の得物である短槍を肩に担いでいた。
「眠らなくていいのか?ここんとこ、毎日奥方様に付き従っているんだろ?」
「少しだけ。ちゃんと状況を把握したら寝るつもり」
黒いローブを頭から被った人間が、塀の周りに数人張り付いている。《魔灯(ライト)》で照らされている塀をしきりに点検していた。
コツ、と靴音を響かせて貴族子息の格好をした小柄な人物は、とある場所で立ち止まった。
栗色の瞳の向かう先は、塀。人の背丈よりも高いそれは、まだまだ建てられたばかりで白かった。
「ヴァーレリー?どうしたんだ?こんな遅くに」
「……イーヴォ」
その人の存在に気付いたのは、赤髪の青年。がっしりとした体格で、一目見ただけで筋肉が程よく付いているのが分かる。
騎士の中でエリート中のエリート。近衛騎士の制服に身を包んだイーヴォは、自身の得物である短槍を肩に担いでいた。
「眠らなくていいのか?ここんとこ、毎日奥方様に付き従っているんだろ?」
「少しだけ。ちゃんと状況を把握したら寝るつもり」
黒いローブを頭から被った人間が、塀の周りに数人張り付いている。《魔灯(ライト)》で照らされている塀をしきりに点検していた。