「ねぇ、シェアしない?」


「舞香ちゃん、いらっしゃい」


お母さんが、家にやってきた舞香を笑顔で迎える。


「お邪魔します。あっ、すごくいい匂い」


「アップルパイ焼いてみたの。食べる?」


「食べます食べます!おばさんの作るスイーツ、最高だもん!」


少し大袈裟に舞香が喜ぶと、お母さんはにこにこしていた。


私はとてもじゃないけど、甘いものを食べても苦いとしか思えない。


ここ数日、舞香は私の家に泊まってくれた。


その間に、すっかりお母さんに気に入られてしまったんだ。


「でもここ最近、何も送ってこないんでしょ?」


私の部屋で、舞香と向かい合う。


そうなんだ、舞香が泊まりに来てからは、何も送られてこない。


ストーカーも用心しているのか、それとも?


「もう諦めたんじゃない?」


「そうかな?それならいいけど」と、部屋の中を見回す。


もちろん、あの縫いぐるみは捨てた。


ストーカーが、この部屋の中に入ったのだと思うと寒気がする。でも一体、どうやって?勝手に侵入したのか?


「それより、向井くんとはうまくいってるの?」


舞香が、明るい声で話を変えた。


本当なら、その気持ちに乗っかりたいところだけど__。


「最近、ちょっと素っ気ないかも」


「えっ、ホントに?」


「うん」


私は力なくそう返事をした。


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