「ねぇ、シェアしない?」


「ホントにごめんね」


舞香が手を合わせて謝る。


今日は家の用事があるらしく、泊まることができないというんだ。


それに加え、警察に届けたほうがいいかもと。


確かに、あれは不法侵入だ。


夜中に私の部屋に忍び込み、髪を切った。そしてそれを送りつけるという、異常な犯行。まだ髪の毛だけですんだけど、どうなっていたか分からない。


たぶん、隣で舞香が寝ていたから、その程度ですんだんだ。


もし1人だったら?


考えるだけで身震いがしてくる。


とりあえず、今日はお母さんと一緒に寝よう。


「どうしたの急に?」と訝しむお母さんは、でも少し嬉しそうで。適当にごまかして、一緒に寝ることにした。ストーカーなんて言って心配かけたくはない。


「舞香ちゃんて、お家のほうどんな感じなの?」


「どんなって言われても」


そういえば、舞香とはそんな話をしたことがない。


家も知らないし、家政婦がいるとしか。


「なんだか、寂しいんじゃないかと思って」


「寂しい?」


「そう。そんな気がするの。だからここに来るときだけでも、楽しく過ごしてほしいわ」


お母さんはそう言って「おやすみ」と背を向けた。


舞香が、寂しい?


そんなこと思いもしなかったけど、お母さんはなにか感じたんだ。


今度、それとなく家族のこと聞いてみようかな。


なんて思いつつ、私も眠りについた__。


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