「ねぇ、シェアしない?」
物音が聞こえたのは、それからしばらくして。
なにかが聞こえた。
お父さんかな?
お父さんは仕事で帰りが遅い。日付が変わるころに帰ってくることも多いから__。
お母さんを起こさないよう、布団から出た。
喉が渇いたから、水を飲みたい。
キッチンに行き、冷蔵庫を開けた。ミネラルウォーターのペットボトルを手に取り、ぐびぐびと半分ほど飲み干す。
「はー」
口の周りを拭ってから、ペットボトルを戻して冷蔵庫を閉めた。
そこに、男が立っていた。
「っ⁉︎」
背の高い、目出し帽を被った男が、スマホで私を撮っている__。
ぞわっ。
痺れのようなものが体を駆け巡り、悲鳴を上げることもできずに、じりじりと後ずさる。
それでも男は、私を撮るのをやめない。
だ、誰かっ⁉︎
誰か!
弾かれたように背を向けて逃げ出す私の髪の毛を、男が鷲掴みにする。
ぶちっと抜け落ちる髪の毛の束。
強烈な痛みに目が眩み、流し台に突っ込む。
がしゃん!
皿が割れる大きな音が、静まり返ったキッチンに響き渡り、男がはっと身を引いた。
今だ!
逃げようと腰を浮かせた私は、足が弾いてしまった果物ナイフを咄嗟に掴み__。