「ねぇ、シェアしない?」


それからはもう大騒ぎだった。


逃げていったストーカーを追う気にならず、キッチンで座り込む私。すぐにお母さんがやってきて、警察もやってきた。事情を聴かれ『ストーカー』と説明すると、お母さんにこっぴどく怒られた。


どうして相談しないのかと。


とりあえず無事で良かったと抱きしめられたときには、涙が止まらなかった。


でもこれで良かったのかもしれない。


私や舞香だけでは、どうにもできないからだ。警察の手にゆだね、ストーカーも捕まるだろう。パトロールも強化すると言ってくれた。


ホッと安心して、朝までぐっすり眠って登校する。


「優子!」


玄関を出ると、舞香が飛びついてきた。


「ごめん、私が泊まらなかったから」と。


「ううん、違うよ。でももう、一安心かも」


「凄いよ、優子。ストーカー刺したなんて」


「もう夢中で」


その時のことを思い出すだけで、震えが込み上げてくる。


私はストーカーの右手を刺した。


これで、終わってくれるといいけど__。


学校に着くと、下駄箱を確認する。昨日の今日だ、さすがに何も入っていない。胸を撫で下ろして教室に向かう私を「ちょっと、優子、あれ__?」と舞香が強く引っ張った。


その先には、三浦明美がいた。


私が見ていることに気づくと、明美は薄っすらと笑ったんだ。


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