「ねぇ、シェアしない?」
「本当に心当たりないの?」
男の顔を確認した舞香が、私を振り返る。
「知らない」
「とにかく警察に知らせたほうが__」
「でも、もう学校とか行けなくなる。達実とも会えなくなるかも」
それを考えるだけで、涙が溢れてくる。
「優子、大丈夫だよ」
舞香がそう言って、私を抱きしめてくれた。
「優子の苦しみは、私の苦しみでもあるんだから。私が半分、背負ってあげる」
「舞香」
「だから心配しないで」
優しく微笑む笑顔を見ているだけで、心が落ち着いていく。
でも、この状況をどうするのか?
「なかったことにすればいいのよ」
「えっ?」
「優子はなにも悪くない。つきまとって襲ってきたこいつが悪いんだから。なにもなかったことにして、忘れればいいんだよ」
「そんな、でもどうやって?」
「優子、向井くんと最近あんまりだって言ってたよね?」
いきなり話の矛先が変わって、頷くのが精一杯だった。
「付き合いがうまくいくコツ、知ってる?」
「なんの話をしてるかちょっと__」
「シェアするんだよ」
「シェア?」
「そう。とっておきの秘密をシェアすれば、より仲は深まるんだから」
ふふっ、と死体の前で薄っすら笑う舞香は、私の知らない人のように見えて__。