「ねぇ、シェアしない?」


達実がシュートを放った。


ボールは綺麗に円を描き、ゴールに吸い込まれる。


その瞬間、試合が決まった。


物凄い歓声が体育館に響き渡り__。


手を叩いて声援を送る私に向かって、達実が拳を振り上げたんだ。


あれから1週間。


私は完全に日常を取り戻していた。


「優子、このあとデートなの?」


一緒に応援してくれた舞香が尋ねてくる。


「約束はしてないんだけど」


「楽しんでね」と先に帰っていく。


その後ろ姿を見送りながら、私は親友に感謝した。


私がこうして日常を送れるのは、舞香と達実のお陰だ。


「惚れ直しただろ?」


額の汗が光っている達実は、1番に私のところに来てくれた。


「うん、かっこ良かった」


「当たり前だし」


「ねぇ、これからデートできる?」


達実の手を取ってお願いすると「あー」と顔をしかめた。


「これから打ち上げ的なやつあんだよな」


「一緒に行っちゃ、ダメだよね?」


期待はしなかったけど、とりあえず訊いてみる。


「女子も一緒だしな」


「だよね」


肩を落とす。


以前、打ち上げに参加した時の、明美をはじめ女子バスケ部の凍てつく視線を思い出した。


「じゃ、行くね」


背伸びして、達実のほっぺにキスをして体育館を後にした。


< 121 / 206 >

この作品をシェア

pagetop