「ねぇ、シェアしない?」
とっさの判断だった。
反射的に私は、明美に向かって手を伸ばしていた。
私の手を明美が掴み、重みがぐっと体を引っ張る。完全に体を投げ出した明美を、私の手だけが掴んでいる状態。でも、こんなのすぐに離れる。
だって、明美は重いから__。
「た、助けて⁉︎」
ゆらゆらと左右に揺れる明美が、金切り声で助けを求める。
その度に、腕がちぎれるかと思うほど引かれ。
「あぁっ!」
とてもじゃないけど、引き上げることはできない。
「早く、早く助けてよ!」
「黙って!」
「早くしてっ!」
私を見上げていた明美の目が見開かれ、急に静かになった。
なにかに、怯えたように__。
「ねぇ、優子」
耳元で囁かれた甘い声に、思わず手を離しそうになった。
舞香は、私の肩に手を置いて続ける。
「その手、離してあげたら?」
と。
「なっ⁉︎」
「だって、そうしないと向井くんを取られちゃうよ?」
「な、なにを__」
私の脳裏に、保健室で2人が抱き合っていた光景が蘇る。
「向井くん、取られてもいいの?」
「それは__」
でも。
でも、私が手を離せば__明美はここから落ちて死ぬ。