「ねぇ、シェアしない?」
新学期2日目。
私と彩音の間に、自然と舞香が割って入る。まるで、ずっとそうだったかのように私たちはすぐに打ち解けた。
安奈が気にならなくはないけど、今のところ何もしてこない。
ほっと胸を撫で下ろす__には、まだ早いんだ。
「いい?まず絶対に城田安奈には逆らわないこと。逆らったらここでは生きていけない」
彩音が声を潜めて、脅しにかかる。
それがあまりに真に迫っているのは、彩音自身が被害者だからだ。
中学の頃、安奈にイジメられていた。
「なるべく目立たないように、って言っても舞香は可愛いからあれだけど」
「私?そんなことないよ」
どうやら本気で言っているらしく、無自覚だ。
これが逆に安奈の逆鱗に触れる可能性は大きい。
「なるべく関わらないこと」と私が付け加える。
「わかった」
「あとそれから__」
彩音が、この高校で無事に過ごす方法をレクチャーしており、転校生の舞香も真剣に聞いていた。
「あっ、肝心なこと忘れてた!向井くんのこと」
「向井くん?」
「そう。隣のクラスの向井達実(むかいたつみ)。もし話しかけられても絶対に喋らないこと。ましてや自分から声を掛けるなんてこと、しちゃだめだからね?」
「どうして?」
「どうしてって、だめなものはだめなの!」
答えになっていないので、彩音の代わりに私が説明してあげることにした。
「安奈は、向井くん狙いだから」