「ねぇ、シェアしない?」
えっ__?
「そうだよ、優子。もうご飯の時間になっちゃうから」
舞香がクッキーを食べながら言った。
お母さんお手製のクッキー。
でも最近は忙しいからと、私がおねだりしてもなかなか焼いてくれなかったのに__。
「あの、お母さん?」
「ちゃんと失礼のないようにね。挨拶するのよ」
「ちょっとお母さん!」
私は強引に、お母さんを引っ張ってリビングから出た。
「私、泊まりたくなんかないし!」
「それがね」と、お母さんは困った顔で話し出した。
「舞香ちゃんのお父さん、うちのお父さんの会社の取引先だったのよ。それも会長さんだって。だから優子、お願いよ」
お母さんは、手を合わせて私に頼み込む。
「なによそれ。そんなの私、知らないし!」
「わがまま言わないで。お父さんクビになったらこの家のローンも払えなくなるのよ?優子だって高校に行けなくなるかも。でも、気に入られれば出世する可能性だってあるし。あれでしょ?泊まりあいっこする、ゲームみたいなもんでしょ?」
ねっ、だからお願い!と拝み倒してくる。
私には厳しいお母さんが、舞香の機嫌を取っていることが、そもそも面白くない。
だから私は絶対、言いなりになんかならない。
そう心に決めたときだった。