「ねぇ、シェアしない?」


「おばさーん、あとで散歩に行きませんか?」


舞香に呼ばれ、いそいそとリビングに戻っていくお母さん。


「いいわね、最近太り気味だからウォーキングしたいと思ってたのよ」と話を合わせている。


「私、そこの公園に行ってみたいんですよ」


お母さんに話しかけているはずなのに、舞香は真っ直ぐ私のことだけを見つめている。


「すぐ近くに公園ありますよね?」


「あるわよ、あとで行ってみる?」


「貯水池があるって聞いたんですけど?」


これは完全に、私に問いかけている。


「そういえばあったかしら?あんまり公園の奥の方には行ったことないから」


「私、行ってみたいです」


「いいわよ」


2人の会話を聞くのが耐えられず、私はリビングを飛び出した。


このままどこかへ行ってしまいたいけど、舞香の家に泊まらなければ、舞香がなにをするか分からない。


着替えや制服を持って、私は自分の家を出た。


どうして私が追い出されなくちゃいけないの?


それに__舞香は何がしたいの?


目的は?


なにもかもを、私とシェアする気なの?


豪邸のチャイムを押すと、年増の家政婦が部屋まで案内してくれた。


ご飯は食べる気にならず、映画のセットのような部屋で過ごす。


静かだ。


死んだように静かだった。


そしていつの間にか私は眠りにつき、1日目が終わった。



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