「ねぇ、シェアしない?」


私は家に帰った。


壮大な屋敷に、帰ってきたんだ。


あと2日の辛抱。そうすればまた、本当の家に戻れるはず。でも、そのあとは?また入れ替わらないといけない?いつまで?いつまでなのか?


舞香は、私から何もかも『半分』奪い取る気だ。


それが『シェア』をするということ。


人生そのものを、シェアする気なんだ。


どうすればそれを阻止できる?一体、どうすれば?


答えがないまま、眠りについた__。


ふと、頬に熱いものを感じ、薄っすら目を開ける。


見知らぬ男が、私の顔を覗き込んでいた。


「ひゃっ‼︎」


慌てて飛びのく。


シーツをたぐり寄せ、膝を立てて我が身を守る。


年配の男の熱い視線から。


「なんだ、舞香じゃないのか?」


「あのっ」


「君は__?」


「クラスメイトの、た、高梨です」


なんとか名乗ると、男性はじーっと私のことを値踏みするように見つめている。


「いつも舞香がお世話になっているよ。私は舞香の父だ」


「お父、さん?」


「邪魔して申し訳なかった。ゆっくりしてくれ」


それだけ言い残すと、そそくさと出て行く。


呆気にとられてその背中を見つめていた私は、それから一睡もすることができなかった。


あの目。


あれは、父親が娘を見る目じゃない。


もしかしたら私、とんでもないところに来たんじゃないか?


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