「ねぇ、シェアしない?」


学校ではつい、舞香を目で追ってしまう。


もしベッドに寝ているのが舞香だったら、2人の間でなにが始まっていたのか?


『寂しいんだと思うの』という、お母さんの言葉が浮かんでくる。暖かい家族に憧れがあるの?だから、私から家族を奪おうとするの?


放課後、私の足は自然と我が家に向いていた。


本当の、マイホームに。


物陰に隠れて様子をうかがう。


自分の家なのに、舞香に乗っ取られたようで__。


「お母さん、早く早く!」


舞香が玄関から出てきた。


今『お母さん』と言わなかったか?


「もう、舞香はせっかちなんだから」


「お母さんがのんびりし過ぎなんだよ」


2人が笑い合って、肩を寄せて歩いていく。


どうやら夕飯の買い物に行くらしい。誰が見ても仲のいい親子にしか見えない。


あれは、私のお母さんなのに__。


半ば脅されて言われるがままなのだろう。すぐにでも出て行って、舞香の手からお母さんを取り戻したかった。


でもそんなことをすれば、お父さんはクビになり、私も死体を埋めたとバラされるだろう。あと1日。そうすればまた戻ってこられる。


それから先のことはまたその時に考えよう。


私は重い足取りで、屋敷に向かった。


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