「ねぇ、シェアしない?」
ぎょろ。
目を剥いた父親が、私に向かって手を伸ばす。
「や、やめて!」
足で蹴って暴れ倒すものの、がちっと足首を掴まれて、一気にベッドの下から引きずり出された。
「舞香」
「わ、わたしは舞香じゃない!」
「舞香!」
胸を揉みしだく手を振り払い、私は父親を思い切り突き飛ばした。
振り返ることなく部屋を出る。
咄嗟に隣の部屋に逃げ込もうとしたけど、ドアが開かない!
「まいかぁああああー!」
追いかけてくるゾンビから逃げるように、階段を駆け下りた。
とにかくこの屋敷から出ないと!
けれど、入り口は頑丈に鍵がかかっている。
窓も開かない。
手に取った花瓶を投げつけたけど、ガラスが割れることもない。
と、閉じ込められた⁉︎
「だ、誰かっ⁉︎」
ふと人の気配を感じて振り返ると、いつもの家政婦が部屋の中から首だけ覗かせている。
「助けて!」
私が駆け出すと__バタン!とドアが閉まった。
「あ、開けて!開けてよ!」
叩こうが引っ張ろうが、ドアはビクともしない。
助ける気がないってこと?
襲われているのに⁉︎
「まーいぃーかぁー!」
すぐ後ろまで迫ってきていた父親を振り切り、私は再び2階に戻った。
手当たり次第にドアを開けていく。
お願いっ、開いて!