「ねぇ、シェアしない?」
そんなことを話していたら、ちょうと向井くんが教室にやってきた。
バスケ部のエースで、背が高くて髪の毛は軽く色を抜いてある。色白で鼻筋が通っていて、切れ長の二重まぶたに見つめられると、女子なら誰でも落ちる。
いわば、学校でナンバーワンのイケメンだった。
同じバスケ部の男子とじゃれ合っているのを、私たち女子は見つからないように、盗み見る。
「確かに凄いカッコいいね」
「でしょ。性格も悪くないよ」
「どうして彩音は知ってるの?話しかけちゃだめなのに」
舞香の問いかけに「中学で一緒だったから」と彩音は答えた。
「じゃ、優子も一緒だったの?」
「うん、そうだよ」
私はそう返事をしたけど、まだ昨日知り合ったばかりの舞香に名前で呼ばれることが、少し気恥ずかしくもあった。
「でも、そんなに城田さんのこと気にしなきゃいけないの?」
転校してきたばかりの舞香の、素朴な疑問だろう。
そこまで安奈の言いなりになる必要は、本来ならない。
私だって堂々と向井くんと話がしたい。
でも__こうやって眺めているだけでいい。
安奈にターゲットにされるくらいなら、こうして遠くから見守っているだけでいいんだ。
それだけで幸せだ。
それくらい向井達実は素敵だった。